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S&T式 参考書・問題集レビュー

本書の構成概略

通称「黒本」(同じ河合出版の『センター試験過去問レビュー』シリーズをそう呼称する場合もある)で知られる本シリーズは、前年度を通して実際に行われた河合塾の「全統マーク模試」を、詳細な解説と知識のまとめを付しながら収録したものである(2016年版ならば2015年に年間を通して行われたマーク模試が収録されているわけです)。

河合の全統マーク模試+記述模試のコンビは、受験者数、受験者層、難易度設定等々を考慮すると、現在、日本の大学受験生にとって最もスタンダードで外すことのできない模試であります。それを収録した本書は、センター試験の出題形式・内容・難易度・時間配分などを総合的に分析した問題構成で、かなり本番に忠実な再現度であると言ってよいと思います。同系統のマーク模試収録型問題集の「駿台予備校版」である「青本」の方は、難度設定が若干高く歯ごたえがありますが、再現度の忠実性はそれに比して低くなるので、河合の「黒」をファーストチョイス、それに追加する必要性がある場合に、駿台の「青」をセカンドチョイスという形を推奨します。

「センター試験」問題のもつ特異性

センター試験はいくつかの固有で特異な性質を持つことによって、受験界では唯一無二の存在たりえます。

まず一つは、その「規模」です。最大60万人が同日同時刻に受験する試験など他にはありません。その出題は、受験生は勿論のこと、全ての高等学校関係者、塾予備校受験事業関係者、保護者、次年度以降の受験生など、限りない数の人々に注視・監視されます。また、問題と解答は翌日には全国紙に掲載され、上記以外のものすごい数の一般の人にも影響を与えます。

二つ目は、その「厳密性」です。教育関係者の最前線から一般の方々まで、尋常ではない数の人々から注目されるため、絶対に出題ミスや論理の破綻、整合性のない解答などが許されません。万が一そんなものが出た場合はすぐに袋叩きにされ、大学入試センターの存在意義が問われることになりましょう。なので、作問に関しては、国公私立大学の教員400名+作問経験のある国公私立大学教員及び学識経験者100名以上のチェック体制を敷いて、約半年がかりで行われると言われています。「知」の粋が結集されているのです。

三つ目は、その「良問性」です。これだけの「規模」と「厳密性」をもって作問されている上に、センター試験には「出題範囲が学習指導要領から逸脱していない」という絶対のルールが存在します。大学が独自に作問する国公立の二次試験や私立大学入試問題では、各大学の作問哲学に合わせて、何を出題しても構わないのです。だから時には、重箱の隅をつつくような難問・奇問が出ることもありますが、センター試験ではそれがありません。絶対のルールを遵守します。

センター試験は、その「規模」と「厳密性」とが、唯一無二の「良問性」を生み出している稀有な存在です。

センター過去問(及び「センター形式のマーク模試」収録問題集)は最高の問題集

だから、これを演習教材に使わない手はないわけです。センター過去問は最高の問題集です。

私は、段階を踏んで演習レベルをアップさせていく教科(英語など)の受験指導の場合、必ず、ひとつの到達ラインとして「センター過去問レベル演習」をメソッドに組み込みます。実施時期は生徒によって異なりますが、基本的なインプットを一通り終了させることが出来た頃合いです。センター過去問の得点率7割~8割を到達できる生徒はGMARCH合格の準備が整い始めています。8割~9割をコンスタントに獲得できる生徒は早慶過去問演習の準備が十分に整い、難関国公立合格予備軍です。、

そして、センター試験本番の過去問に「規模」と「厳密性」でそこまでは及ばないのですが、予備校の叡智を結集させて作っているのが「全国模試(マーク模試含む)」です。だから、全く同じ理由で、本書は基礎の最終確認段階の演習教材として強くオススメします。更に、センター過去問には傾向の変化の年という節目がいくつかあって、余りに古いものは現在の出題の潮流に合わなくなっているという欠点があるのですが、本書の場合は、最新の傾向にぴったりと準拠しているため、過去問だけでは決して出来ない最新傾向の問題演習が出来るという、最大の利点もあります。

センターレベル問題演習はセンター対策のためだけのものではない

本書を使用したセンターレベル演習は、実は、アウトプットだけでなく、インプットの代替としても優れた性能を発揮します。1年を通した模試が5~8回分収録されており、これを全て完璧に制覇すれば相当量の知識がインプットされます。それも、合否を左右するようなクリティカルな知識が集積されたものが。解説に書かれている周辺知識やまとめも美味しく活用するのが、最高効率です。

また、センター試験で必須とされる知識レベルは、早慶の合否を左右する知識レベルと究極的には等しいと言えます。現在の早慶の問題(特にマイルド化の傾向がある早稲田)は、難問奇問が減りつつあって、しっかりとした基礎を様々な面から多角的に問う方向性が強まっている。なので、早慶の合否を決める絶対に落としてはいけない設問の知識レベルは、センター上位レベルの知識と同程度だと考えます。それがとても上手に角度を変えて出題されているに過ぎない。言い換えれば、難問奇問の出来で合否は決まらない。センターレベルの基礎が完璧に身についているかどうかのほうが合否に直結していると私は分析します。そのためにも本書で演習を行うのです。

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