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S&T式 参考書・問題集レビュー

最初の一冊(コアテキスト)には向かない。使いどころに要注意。

単語を長文の文脈の中で覚えるという画期的な方法論を示した本書。
英単語→日本語訳という機械的な暗記をやめて、より意味を持ち、記憶に残るように提唱された本書の方法論ですが、受験勉強開始時のコアテキスト(この一冊を繰り返して徹底的にマスターすれば必ず戦えるもの)には向きません。

英語は積み上げ型の科目ですので、知識を積み上げる順序が大事になります。単語はその順序において、間違いなくNo1プライオリティーです。文章を読むときに、分からない単語は周りの語彙から推測すればよいという事がよく言われます。これは最終段階では当然に必要な作業なのですが、そもそも一文の中に3つも4つも未知の単語があったのでは、推測も何もありません。また、長文の中で単語も一緒に覚えようとして、いきなり長文読解に入ろうとすれば、分からない単語だらけで、その長文問題の復習には単語を調べるだけで何時間もかかることになります。無限に時間があったり、必要な科目が英語だけであれば、この理想論的方法は間違っていない。しかし、受験生は本当に時間がないし、多忙なわけです。だから、効率性を無視した参考書・問題集の選択(質と量共に)は無価値である。

効率性を考えたときに、戦略的に最適なのは「最初(受験勉強開始時)に、頻度順の単語集で、一定ラインの必須単語までを一気に確保する」ことです。具体的に言うと、ターゲット1900の最初の2章分(1500語レベル)程度です。機械的にでいいのです。年々長文化傾向にある難関トップ大学の長文読解の中では、機械的・瞬間的に意味が瞬時に出てこない覚え方では、どうせ役に立たないのだから。この段階を通過してから解釈や読解に入れば、本来欲しかった「推測力」の訓練が初めて出来ますし、何より、最高効率で復習ができます。短時間で忘れていた必須単語を長文の中で確認し、未知のものを追加で覚える選別ができるのです。

本書は「頻度順掲載ではない」という最大の難点と「機械的な暗記作業に向かない」というデメリットを併せ持ってしまっています。また、しばしば指摘されることですが、見開きの長文と和訳のページの後に出てくる「単語が集合されているページ」の出来が宜しくない。長文での中で意味を持って覚えるのがウリのはずの英単語に、赤字で長文中とは全く違う意味の多義が付されている。辞書の丸写しのようでさえあります。本書のコンセプトと完全に矛盾しています。

学校によっては、最初の単語集に本書を選択するところが、実は、少なからずあります。確かに、文章から単語を覚える方法論は理想的です。それは間違いない。しかし、効率性を考えないといけない受験英語対策のファーストチョイスには絶対に向かない。これが私の結論です。

ソクタンには評価が一変する使い方がある。

ファーストチョイス、コアテキストには向かないと書きましたが、それは本書の性質的なものであって、決して悪書ではない。
受験英語学習の中期以降に素晴らしい力を発揮する時がきます。別記事でまた詳述しますが、受験英語の積み上げステップとして、単語+文法・語法+イディオムの基本3パーツを入れ込んだ後に、「一文をきっちり読めるようにする」という英文解釈をスタートします。英文解釈が一段落したら、「一パラグラフを読めるようにする」→「パラグラフの集合体(長文)を読めるようにする」という風にステップを辿るのですが、その段階で「多読」が必要な時期がきます。そのときの多読用教材として、ソクタンの必修編が質量ともに最高なのです。

見開きの左側の長文をガンガン読みすすめる。色が変えてある単語の意味がわからなかったら、すぐに右側ページの訳中で確認できる。辞書を引いたり、単語集を探したりする手間なく、まさに一瞬で確認できます。この効率性をもった多読用教材は、なかなかありません。左ページの長文を最初から順に音読して読破しながら、必須単語の復習ができればかなりの力をつけることが出来るでしょう。

上級編は早慶・英語難関大学(学部)突破の最終兵器

実は、上級編レベルの語彙力が必要な大学(学部)は少ないです。なので、使用するかどうかには過去問の分析と見極めが必要になります。いくら単語力があっても無駄にならない英語最難関で知られる慶應(法)や、理系では図抜けた語彙力が必要な慶應(薬)などへの最後の単語力の一押しには力を発揮します。早稲田政経など文系最難関のイメージわりに、英文の難度はマイルド化して良問になってきている学部には必要ない(他に時間をまわしたほうがよい)ことの方が多いと考えます。

偏差値60~65以上の最終多読用教材としてもピカイチ。但し、あくまでコアテキストである単語集が完璧に仕上がってからの使用にするべきです。

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